韓国ドラマ「アルゴン∼隠された真実∼」を観て

2017年
配信全 8話(1話 約 62分)
「簡単あらすじ」
テレビ局HBC唯一の調査報道番組「アルゴン」のチーム長でキャスターを務めるキム・ベクジン。
「アルゴン」は報道における数々の受賞歴があり またキャスターを務めるベクジンも好きなキャスター部門で毎年ベスト3に入る人気を誇っていた。
ある日 かつて報道した教会牧師によるカジノ献金流用疑惑が 後に誤報だったとされ「アルゴン」は謝罪に追い込まれた。
そして責任をとる形で深夜枠へと追いやられる事になった。
しかしそれは牧師の関係者による事実隠ぺい工作によるものだった。
そんな中 商業施設の崩壊事故が起き作業員と客 約150人の安否が不明だという速報が流れた。
他局に先を越された形になりその面目躍如の為に「アルゴン」ともうひとつの報道番組「ニュース9」が主導権争いをする。
結果「ニュース9」が事故の速報を追い 「アルゴン」が事故原因を掘り下げて報道するという形を取る事になった。
しかし「ニュース9」の局長は不満だったのだ。
「アルゴン」を出し抜きたい局長はひとつの映像からエレベーター前に落ちていたヘルメットに目を付けた。
その後スクープとして「ニュース9」でその詳細を報道した。
これが大きな波紋を広げる事になる。
ベクジンはそのスクープ報道に懐疑的だったのだ。
感想
ニュース番組を通して報道の在り方・テレビ局としての姿勢を問う社会派ドラマだったと思います。
商業施設崩落の原因として限定報道されたのは ”現場監督の責任”という内容でした。
これが「ニュース9」のスクープだったのですね。
いち早く原因を特定した事で世間の目は 現場監督とその家族に向くのです。
工事中の地下駐車場が潰れた事で数多くの人が生き埋めになった事故現場でしたが 現場監督が水道管破裂を知っていて放置したまま工事を続けた結果だと報道しました。
そしてこの事故は「人災」だったと締めたのです。
更にその現場監督は避難誘導もせず自分だけ貨物用のエレベーターで逃走したと伝えたのです。
そうして指名手配される事になったのです。
報道番組では顔写真が出て 各地でその人物を見かけたという情報が出る様になりSNSで拡散されたのです。
その男の家族にも執拗な取材が行われ 妻と幼い子供には市民から物をぶつけられる事態にまで発展してしまいました。
妻はケガを負い入院し子供は口がきけなくなってしまったのです。

ベクジンは現場監督説には不明な点があるとして「アルゴン」では事故で亡くなった人たちの人生にスポットを当てる方針を立てましたね。
日に日に死亡者が増えていく現実に報道する側も胸が痛むのです。
未だ消息不明の中には幼い少女もいましたし 指名手配された現場監督の名前もありました。
彼を見かけたという情報も信ぴょう性を疑いますね。
ベクジンは「ニュース9」の報道に後方支援をする立場でしたが 結果的に局の方針に逆らう形を取りました。
彼は視聴者に現場監督家族の責められている映像を放送し こう話したのです。
「非難の対象を間違えているのではないか」
「弊社は現場監督の責任と報道したが「アルゴン」は異を唱えます」と。
「ニュース9」関係者は怒りに震え「アルゴン」放送中にも関わらずスタジオに乗り込み揉み合いになったのです。
その時でした。
「崩落事故現場で現場監督の遺体が見つかった」という連絡が各自の携帯に入ったのです。
しかも「消息不明だった女の子を庇うように抱いていた」と。

ドラマの中にもうひとりの人物が登場します。
契約社員のイ・ヨンファという若い女性記者です。
彼女は契約満了日を半年後に控え「アルゴン」へ異動になったのでした。
ヨンファにとっては憧れの「アルゴン」であり憧れのキャスターキム・ベクジンだったのです。
けれど彼女は歓迎されませんでしたね。寧ろ冷遇され厳しい目で見られたのです。「アルゴン」のスタッフ全員に。
それには理由がありました。
あの教会牧師の献金流用疑惑を取材したのが「アルゴン」の記者だったのです。
しかし牧師と局の社長が知り合いだった事で報道は誤報であると結論を出し 記者は解雇されたのです。
その代わりにと12名の記者が採用された事で関係者はその人たちの事を「傭兵」と呼んでいたのです。
社長の息の掛かった人間として見られ「アルゴン」スタッフは怒りを覚えていたのですね。
ヨンファもその「傭兵」のひとりだと思われたのです。
ベクジンも同僚を解雇された恨みもありその代わりに採用されたと思われていたヨンファの事は仲間とは思いたくない存在だったのですね。
でもこのヨンファが崩落事件の新しい情報を手に入れたのです。

ベクジンが局の方針に逆らった事で窮地に立たされます。
局内で方向性が真逆であることを世間に露呈させてしまった事は 放送局として信頼を失う事だと言われます。
それでも正しい事実を放送するべきだと主張するベクジンに対して局側は「アルゴンさえ良ければそれでいいのか 局への信頼が薄れる事になっても」
どんなに正しいと思う報道でも視聴率が取れないし 広告も付かない番組なら局として邪魔な存在でしかないのでしょうか。
更に追い打ちを掛ける様に「アルゴン」の製作費を半減するとか 契約社員を切るという事にまで発展してしまうのですね。
「アルゴン」存続の危機に直面したベクジンは選択を迫られます。
その後他の事件で ベクジンは自身の意志を曲げてしまう様な決定もあるのですね。

面白かったですね。
崩落事故の裏には国・市・銀行・検事の賄賂が関わっていましたね。
国有地を商業用に変更したり多額の融資を許可したり 事件をもみ消したりとあの商業施設は不正の温床だったのです。
そうして起きた大事故は手抜き工事以外の何物でもなかったのですね。
現場監督の潔白が証明された日 放送後ベクジンの元に一本の電話が入りました。
その人は亡き現場監督の妻でした。
電話の向こうで妻はただ ただ何度もありがとうございましたと繰り返すのです。
何度も何度も繰り返すのでした。
様々な事件に対して事実を報道する姿勢を取り戻すベクジン。
その結果ベクジンは正しい報道で社会に貢献した人に送られる賞を受賞する事になりましたが その席のスピーチで彼はこう話しました。
「 私は正しい報道という役目を果たせなかった。
賞にはふさわしくない。
真実を追い続けた先輩の皆さんと 今も現場で奮闘している同僚記者さん達にこの賞を送ります」と。
そうして彼は長年勤めた社を静かに後にしたのです。
最後まで読んでいただきありがとうございました♪
