韓国ドラマ「VIP∼迷路の始まり∼」を観て
2019年製作
全32話(1話 約 32分)
「簡単あらすじ」
ソウル市内のデパートの中に富裕層だけを担当する「VIPチーム」があり、そこで働く夫婦がいる。
ある日。妻の携帯に差出人不明のメールが送られてくる。
「同じチームの中にご主人の愛人がいます」
女性が多い職場なので、妻は愛人は誰なのか…本当にいるのか…悪戯なのかと疑心暗鬼の中で 女性たちの行動に目を向けるようになる。
そして夫と向き合うことになり、メールの内容は真実なのかを問いただす。
夫は明確な返事はしないけれど 俯いてしまい、認めた形になる。
名前を聞いても絶対に口にはしない夫…
妻の迷路が始まるが、本当の迷路に入り込んでしまったのは果たして誰だったのだろうか・・
感想
配信では32話まであったのですが一気に観ました
完全ネタバレをしますが、結論から言うと夫の不倫がきっかけになりそこから始まる離婚に至るまでの夫婦の葛藤と、夫 妻 愛人と、それぞれの苦悩を表現しています。
取り分け妻と愛人への想いの中で、苦悩する夫はとにかく言葉が少ないので、表情でその時々の心の動きを表していました。
不倫という艶めかしい言葉とは裏腹に、夫と愛人のふたりだけのシーンでは、所謂ラブシーンというものはありません。
愛人は自身の身の上に起こる現状に よく泣いているのですが、その肩を優しく夫が抱き寄せるという場面が何度が出てくるだけで、愛人の目を見て「愛してる」の言葉も出て来ませんね。
夫が愛人への気持ちを表すのは 友達と妻の前で 胸が痛む人と説明する時 だけですね。
車での同乗シーンやエレベーターの中でのシーンが多いのが特徴的かもしれません。
それだけこのドラマは不倫がきっかけではあるけれど、あくまでもメインは夫婦の葛藤とお互いの心の動き、そして夫の心の中にある妻への振り切れない想いが折に触れ表現されていたのだと思います。
妻は離婚を切り出されその理由に不倫の事実を告白されますが、簡単には応じず夫への憎しみと復讐心が沸き起こります。
ですが、終盤義母の話を聞いてその復讐に無意味さを感じていきました。
むしろ10年間の結婚生活の中で知らなかった、夫の心に秘めていた苦しみを知り胸が痛むのです。
そうして静かに離婚を決意しました。
愛人は彼の気持に不安を抱いていたのだと思います。
よく彼の横顔を探るように見つめています。
きっと傍にはいてくれるけれど、本心を掴めずにいたのかもしれません。
特に離婚が決まった終盤、彼の心の中にある悲しみを感じ取り、会えなかった日々よりも一緒にいる今の方がずっと寂しい、 そう言って涙の中別れを決断しました。
夫は一時期愛人への強い想いがあったようですが、でもそれは未来を見据えるものではなかったようです。
愛人の誕生日をふたりで祝うシーンで「来年も一緒に祝ってください」と笑顔で話す彼女の言葉に 夫はふっと目を伏せてしまいます。
もしかすると今年が最初で最後になるだろうと、そんな思いが過ったのかもしれません。
その後の回では 愛人から別れを告げられた時 彼は引き留める事はしませんでした。
離婚も決まっていたのだから ふたりで新しく始める事は出来たはずですが、やはり夫にはこれ以上は進めないという思いがあったのかもしれません。
先細りの感情だったのだと思いました。
むしろ寂しい思いをさせてしまった事に 申し訳なさを感じたのかもしれません。
夫は実母に「一瞬の感情であなたは全てを失った 自分が何を失ったのか気づいていない 今は気づいていないだけ」と言われますが、やがてその意味を痛感することになります。
離婚後カメラに残されていたフィルムを現像して、それを一枚一枚見ている夫がいます。
・・ 徐々に泣き顔になってその場で号泣してしまいます。
その写真に写っていたのは 妻の姿でした…
結局誰もしあわせにはならなかったのですが、最後に夫と妻が雪降る中歩いていて 妻が「あなたと出会わなければ良かったのかと思ったけれど 違った」 「あなたに出会えて良かった」「後悔していない」と告げます。
妻にとっては辛く苦しい日々だったけれど この言葉で新しく前進出来る事に、少しの希望を感じました。
夫は「感謝している 本当にありがとう」と伝えます。
あの最後の言葉には寂しさが滲んでいたように思います。
目を見て話すふたりに まだ愛し合ってるじゃないのと思ってしまいましたが、ふたりは終わりました。
夫にとって愛人はいつか終わらせたい人だった
夫にとって妻は失ってはいけない人だった
ドラマの結末を見て ふたりの言葉を聞いてそう感じました。
本当の迷路に入り込んでしまったのは夫だったと思います。
自業自得とはいえ 後悔という重い荷物を背負ってしまったのだと思いました。
物語の中では「VIPチーム」の仲間たちのそれぞれの背景が散りばめられていて それが癒しになりました。
ただ、個人的にはこのドラマは少し重いので 心に余裕のある時に見た方がいいかもしれないと思いましたね。
ふたりの想いの表れ
このドラマには頻繁にメールのやりとりが出て来ますが、その時の登録名に夫婦の心の奥底にある想いを感じました。
夫の携帯には、愛人の事はフルネームで 役職が付くとフルネーム+役職名に変更されています。
ですが妻を表す名前は特別な四文字が
妻の携帯でも夫を表すのは同じ四文字です。
それぞれ昇進していますが、最後まで変わることがありませんでした。
「僕の味方」「私の味方」
そこには愛し合っていたふたりが 確かにいました。
最後まで読んでいただきありがとうございました♪
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